旅立ち ― もの凄い逃走へ水 城 すべてを捨て、なにもかも忘れて旅に出る。誰もが一度はあこがれることだろう。 たとえあこがれたとしても、そう簡単に現在の生活を捨てることはできない。社会人ならなおさらだ。 旅は日常から脱出する行為である。息詰まる日常生活を離れ、新しい活力を注入するために人は旅をする。とはいえ、帰るべき日常生活があって初めて旅は成立する。日常を捨て去って旅のみに生きれば、世間では逃げと捉えられるかもしれない。 これまで積み上げてきた生活はどうする? よりよい将来のために、小学生から延々とつまらない勉強をこなしてきたのではないか。学生だったら、学校を卒業しなくていい会社に就職できるのか。社会人だったら、会社を辞めてそんな簡単に次の職が見つかるのか。答えはもちろんNoだ。そんなに社会は甘くない。確かにその通りだろう。 しかし、なにかを犠牲にして旅に出なければならないときがある。理屈ではない。ただ出なければならない、それだけだ。 旅が逃げならそれでいい。ただしどこまでもいってやる。気が済むまで、それこそ嫌になるくらいに。 旅に魅せられた男がまたひとり日常を捨てた。 そして、もの凄い逃走を開始した。
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